妙見寺ブログ

  • 掃除

    2019年04月01日

    4月になりました。本日新元号が令和に決まりました。明るく平和な日々が続きますことを切に願います。

    さて、今月は掃除についてお話をしたいと思います。皆さんは普段どのくらいの頻度で掃除をされていますでしょうか?

    掃除が苦手だという人もいらっしゃるかと思います。掃除は仏教においてとても大切な修行の一つです。お釈迦様の時代にも一生懸命掃除を心がけ、お悟りを開かれたお釈迦様のお弟子様がいました。今月はそのお弟子様のお話をしたいと思います。

    昔々、インドに「パンタカ」と呼ばれる青年がいました。

    パンタカはとても物忘れが激しく、時々自分の名前さえも忘れてしまうこともありました。
    そんなパンタカは仏様にあこがれ、仏様の弟子となりました。パンタカは頭の悪かったので、仏様は短い言葉から彼に教えます。
    しかし、彼はそれさえも覚えることができませんでした。何年も何年も修行をするものの、パンタカは仏様の教えの一つも覚えることができませんでした。
    ついにそれを見かねたパンタカの兄は、ある日パンタカに故郷に帰るように諭しました。

    パンタカは気を落とし、自分はどうしてこうも頭が悪いのだろう、と門の前で泣いておりました。

    するとそこに仏様が通りかかります。仏様は「何故、泣いているのだ?」パンタカに尋ねました。
    パンタカはこう言いました。「私は、何故こうも愚かなのでしょうか?あなたの弟子になる資格がありません」
    すると、仏様は、「自分を愚かだと思う者は愚かではない。自分の愚かさに目を向けず、自分が賢いと思い上がっているものが愚かなのだ。自分の愚かさを知っている者が真の知恵者だ」と答えます。
    そして仏様はパンタカに尋ねます。「お前が一番好きなことは何なのだ?」
    パンタカは答えました、「私は掃除が好きです」

    仏様は、「そうか、お前は多くの事を覚えられないようだから、これからは好きな掃除をしながら、この言葉を唱えなさい」
    そう言うと仏様は、ほうきを手渡し、次の言葉を教えました。『塵を払い、垢を除かん』
    パンタカは、それなら自分にもできそうだと、喜びます。そして、掃除がはじまりました。『塵を払い、垢を除かん』『塵を払い、垢を除かん』『塵を払い、垢を除かん』。
    パンタカはこの短い言葉でさえ忘れてしまいそうになりましたが、何度も何度も繰り返して、やっと覚えることができたのです。

    そして、数年が経ちパンタカは、仏様に聞きます。
    「どうでしょうか仏様、お寺は綺麗になりましたか?」仏様の返事は 「まだまだ完ぺきとは程遠いですね。」
    パンタカは何度も何度も掃除を繰り返しますが、どんなに綺麗にしても、「まだまだ」と言われます…
    しかし、パンタカは、めげることなく掃除を続けます。パンタカは、ひたすら掃除をして、気づけば20年も経っていました。
    ある時、せっかく綺麗にした場所を、子どもたちが来て汚してしまいました。
    パンタカは、思わず子どもたちに怒鳴りました。

    「コラ!せっかく僕が掃除したのに!」その時、パンタカは、本当に汚れている所に気づいたのです。

    私は私自身の心の汚れを綺麗にすることができていなかった。
    綺麗にしても、すぐに汚れてしまうのは、物も心も同じなのです。
    そして、チリや垢は、自分の思ってもいないところにあるのだ、と気づきます。
    こうして、パンタカは、阿羅漢(アラカン)の境地に達したのです。
    阿羅漢とは、修行して心の汚れを落とし、悟りの第一段階に達することです。
    仏様は、皆の前でこう教えました。「悟りを開くということは、沢山のことを覚えることではない。僅かなことでも根気よく徹底してやることなのだ。パンタカは、掃除を徹底してやることでこのように悟りを開いたのだ」こうして、パンタカは、十六羅漢の一人となったのです。おしまい

    皆さんこの話を聞いてどう感じましたか?パンタカの一生懸命な努力にとても感動しますね
    このお話を通して、私たちは2つのことを学ぶことができます。

    1つ目は「自分の愚かさを知っている者が真の知恵者」であるということです。
    私たち人間はいつも自分が正しいと思い、思い上がる傾向があります。
    自分が賢いと思って思い上がっている人は、愚かな行為をしてしまったとしても、気づかなかったり、自分は正しいと信じ込んでしまいます。「謙虚」な気持ちを大切にして、自分はまだ成長段階にいるのだと思うことが大切なのです。パンタカのように自分の行いに注意し、いつも反省できる人になりましょう。 2つ目は、「一つの目標を叶えるには根気が必要」だということ。
    お話の中で、仏様は皆の前で言いました。
    「悟りを開くということは、沢山のことを覚えることではない。僅かなことでも根気よく徹底してやることなのだ。パンタカは、掃除を徹底してやることで、このように悟りを開いたのだ」 
    今の私たち人間の社会には情報が溢れ、やりたいことが満載です。私もいろいろな事に手をつけてしまうことがあります。好奇心が強いのは良いことではあります。気分転換や、趣味の範囲でいろいろと体験することも良いことなので、けれども、自分の叶えたい大きな目標があるなら、そのことに関しては徹底してやり通す根気が必要になります。あれこれやっていては何も目標を叶えることのできぬまま人生が終わってしまうかも知れません。パンタカは自分の好きな掃除を徹底的に行ったからお悟りを開くことができました。皆さんもとことん自分の目標に対して一生懸命うちこむことのできる人になりましょう。合掌。

pagetop