妙見寺ブログ

  • 達磨様と慧可

    2018年11月01日

    賑やかなハロウィンも終わり11月になりました。皆様如何お過ごしでしょうか?

    先月10月20日は太子町で「竹内街道灯路祭り」が開催されました。昨年は雨で中止になっておりましたので心配しておりましたが、今年は無事開催されました。妙見寺では灯路祭りに合わせ4時と5時の2回坐禅会を行いました。普段お越しになられない方が多くお越しいただき、素晴らしい一日となりました。

    そして皆様10月5日は何の日かご存知でしょうか?毎年10月5日は達磨様のご命日です。達磨様は禅の教えをインドから中国に伝えたことで有名です。禅宗のお寺では達磨様をとても大切にし、命日である10月5日には達磨様の法要を行います。

    今月は達磨様とその弟子である慧可(えか)との有名なお話をご紹介させていただきます。
    昔々、達磨様の下で修業をしていた慧可という僧侶は長年の悩みを達磨様に打ち明けました。慧可は長い修行を重ねてはきましたが、その悩みを解決することはできませんでした。
    慧可は達磨様に言いました。
    「我が師に是非教えていただきたいことがあります。私はどうしても心が安らぎません。どうか私の心を落ち着かせて下さい。」そして達磨大師はこのようなことを言いました。
    「よろしい。ではお前の心をここに出しなさい。落ち着かせてあげよう。」
    それを聞いて悩んだ慧可はこう答えました。
    「私には心をここにもってきてお見せするということはできません。」
    それを聞き、達磨大師は微笑んでこう言いました。
    「慧可よ。安らぎのない不安の心が出せないのなら、もうお前の心は落ち着いたのだよ。」
    その言葉を聞いた慧可は、達磨様の伝えたかった真理に気づき、不安なく禅修行に打ち込むようになりました。おしまい。

    以上のような短いお話でしたが、皆様はこのお話の中で達磨様が慧可に伝えたかったことは何かわかりますか?
    様々な考えがありますが、私が皆さんにこのお話から学んでいただきたい2つのことがあります。

    まず1つ目は、「自分自身が不安という感情を生み出していることに気づく」ということ。
    このお話の中で達磨さんは慧可に不安という心がどこにあるかということを気づかせました。達磨さんはお前の心をここに持ってきなさいと言いました。しかし慧可は自分の心を持って来ることができませんでした。さて質問ですが、皆さんは自分の目の前に自分の心を出すことはできますか?誰も出せませんよね。つまり私たちは普段自分の感情に振り回されて生きていますが、実際触ることも見ることもできないのです。それはなぜかというと、自分の心というのは自分自身が作り出した実体のないものだからです。
    もし私たちが自分の心を具現化して出すことができたら、私たちはその心を修理したり、新しい心に変えることができるかもしれません。しかし実体がないものですからそれを人に直してもらうということは不可能です。
    だから、達磨様は「だせるはずもない心を目の前にだせ」と慧可に伝え、慧可自身で不安という心は、自分自身が作り出した幻のようなものであると気づかせたのです。
    そしてその達磨様の一言で慧可の不安の心は消え、達磨様のもとで素晴らしい僧侶となりました。ここでこの話は終わりますが、皆さんこの話をきいてどう感じましたか?この話だけで納得できますか?自分自身の日常生活に当てはめてみてください。もし皆さんが病気や将来の不安で悩んでいる時、私から「達磨さんの言った通り、不安なんて自分の作り出したものだから、そんなものは存在しないんだよ。」と言われて納得できますか?実際私は、病気で悩まれている方にこのお話をして理解するのは難しいとおっしゃられました。私はこのお話の中に次のような達磨様の想いも込められているのだと感じております。

    2、「今の瞬間を生きることで、不安という感情は存在しなくなる」ということ。
    ここが私が達磨さんの伝えたかった2つめの大切なことであると思います。これは直接的にこのお話とは関係が薄れますが、達磨様の9年間続けられてきた坐禅の実践にはこのような想いが込められているのだと私は感じております。
    想像してみてください。もし私が皆さんに今皆さん自身の人差し指だけを見てくださいと言ったら、どうしますか?ただ自分の人差し指だけを見るすよね?次に今私が皆さんにただ気持ちよく手を広げてくださいと言ったらどうしますか?ただ手を広げますよね?それと同様、私たちは今の瞬間の動作に対して意識を集中させていれば、その瞬間他の事は考えないのです。その瞬間自分の不安な気持ちや欲望は自分の近くには存在していません。
    これが禅の修行においてとても大切なポイントです。「ただ一つの動作を丁寧に行って行くこと」です。その中では不安の感情などは入る隙間はありません。達磨様は坐禅を通して慧可や私たちにそのことを伝えたかったのだと思います。ですから、もし皆さんが普段の生活の中で不安な気持ちを感じた時、一度様々なことを考えるのを止め、ただゆっくり深呼吸をしてみてください。その瞬間心は落ち着き、不安な気持ちは少しずつ離れていきます。そしてこの深呼吸をしている時の気持ちを大切にして毎日を過ごしてみてください。
    それが禅を取り入れた日常生活です。禅の修行は特別難しいことではありません。ただ一つの動作を丁寧に行って行くことです。達磨大師が実践して生涯かけて伝えてきた禅の教えを大切にしていきましょう。

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