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初心
2017年10月01日
お彼岸が過ぎ、だいぶ朝晩が肌寒くなってまいりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。
今回は皆様に道元禅師様が残された大切な言葉をご紹介させていただきたいと思います。
「身 初心なるを顧かえりみることなかれ」
これはいつも初心を忘れることなく、どんなことにも油断することなく取り組んでいくべきだという、道元禅師様からの励ましのお言葉です。皆さんは「初心」という言葉に関して深く考えたことはございますでしょうか?今日はこの道元禅師が説く「初心」という言葉に関して、とてもその教えを大切にし、よりわかりやすく言葉にされている、アメリカで活躍をした鈴木俊隆老師を紹介したいと思います。鈴木老師はアメリカのZen文化に大きな影響を与えた方です。1959年にサンフランシスコの桑港寺というお寺の国際布教師として日本の静岡県から赴任されました。当時アメリカではカウンターカルチャー(既成の社会体制と価値観からの離脱を目ざす対抗文化)というムーブメントが起き、ベトナム戦争、冷戦などでアメリカ政府に不満を持った若者たちがもっと自由や平和、環境保護などを訴えるようになりました。アメメリカ西海岸にはそんな若者達がたくさん住んでおり、彼らは鈴木老師と出会い、次第に鈴木老師の禅の考え方、禅の修行に興味を持ち始めていったそうです。鈴木老師は55歳からアメリカへわたり、67歳で亡くなるまでのわずか12年間のアメリカ生活でしたが、その間に多くの禅の仲間を増やし、サンフランシスコ禅センターを始め、多くの禅の修行ができる施設が作られました。そして今も鈴木老師の教えが書かれた本が海外の方に広く影響を与え続けています。ご存知の通りIphoneで有名なアップルのスティーブジョブズも彼の影響を受けた一人です。
私も「禅マインド ビギナーズ・マインド」と言う本を読み、鈴木老師のこの言葉がとても印象に残っています。
「禅マインドの修行とは、初心の修行です。初心者の心とは、空であり、専門家の持っている「くせ」がなく、すべての可能性に対して、それを受け入れ、疑い、開かれている、準備ある心です。大切なことは坐禅や日常生活において、どのようにこの初心を保つか」
この言葉を聞いて、私は改めて禅の考え方を見直させていただきました。
大前提として、鈴木老師は禅の心が初心であると説かれています。そして初心とは、様々な考えを柔軟に取り入れることのできる開かれた素直な心です。多くの人は熟練し、何か特別な力を得たり、心境に達したりすることが良いと考えるかもしれませんが、鈴木老師はそうではなく、その初心者の純粋な心を保ち続けることが大切であるとおっしゃられました。
では私たちの日常生活ではどうでしょうか。はじめてスポーツを習う時、はじめて車を運転する時、初めて仕事をする時、緊張もありますがとてもワクワクする感情がありますね。しかしながら、それに慣れてしまうと、真剣さも薄れ、他のことを考えてそれに取り組んでしまうかもしれません。
曹洞宗は生活の全てが修行と言われております。食事の時や掃除の時など、どんな時でも最初に学んだ作法を忘れることなく丁寧に行うことが大切です。
道元禅師の教え「身 初心なるを顧かえりみることなかれ」。初心を大切にするという考え方を自分の日常生活に照らし合わせていただき、今一度丁寧に物事にとりくんでみてはいかがでしょうか。それが大切な禅の心を育てる修行です。合掌。