妙見寺ブログ

  • 心施

    2017年03月24日

    3月はお彼岸の月でした。皆様はお墓参り、またはご先祖様の為にお手を合わされましたでしょうか?

    お彼岸の時期にはご先祖様のお墓へ行き、亡くなった故人様の幸せを願います。そして自分も苦しみのない仏様の世界である「彼岸」にいけますようにとお祈りをし、仏様の修行を行ったことがお彼岸の始まりだと言われています。
    今月は「無財の七施」というお釈迦様の教えで、ものやお金が無くても誰でも簡単にできる7つの布施の中の「心施(心慮施しんりょせ)」についてお話をしてまいりたいと思います。この教えは自分の心を相手に与える、つまり相手の気持ちに寄り添う、または相手の気持ちになって行動するということです。 私はこれが相手と理解し合う上で必ず必要なことであると思います。「心施」ができる人はこんな素晴らしいことができます。
    例えば、もし横断歩道で目の不自由な人が立っていたら、あなたはあの人が道を渡れず困っているんだなと気づき、「大丈夫ですか?」と声をかけ、手を握って道路を渡る手助けをすることできます。もしあなた友達が少しいつもと違う顔をしていれば、あなたは友達が何か困っているんだなと気づき、友達の相談に親身になって聞くことができます。しかし、もしあなたが自分のことばかり考えていると、あなたは目の不自由な人の存在や友達の些細な変化にも気づかないかもしれません。

    私は「心施」の大切さについて、気づかされた出来事がありました。
    それは東日本大震災です。今から6年前の3月11日、私たちにとって二度と忘れることのできないとても大きな災害が起こりました。マグニチュード9.0の地震が東北地方を襲いました。それにより沿岸部では約10メートルに及ぶ巨大津波が発生し街を飲み込みました。さらに地震発生後、福島第一原子力発電所(福島県双葉郡大熊町・双葉町)において、放射性物質が漏出する重大事故が発生しました。この災害により約1万9千人の命が奪われ、今も避難を強いられている方が数多くいらっしゃいます。今年であの災害から6年目、7回忌の法要が日本各地で行われました。妙見寺でも7回忌の法要を住職が、私副住職もハワイ島のお寺で務めさせていただきました。
    災害発生当時、私は何かお役に立てることはないかなと思い、大阪の僧侶たちと2度ほど支援活動の為に福島県、宮城県を訪れ、崩れて無くなってしまったお寺の前や海に向かって、お経をおあげさせていただきました。そして瓦礫の撤去作業、仮設住宅へ回り、大阪からもってきたたこ焼き器を使ってたこ焼きを皆さんに振舞い、傾聴活動もさせていただきました。
    最初はどのような気持ちで被災された方と接すればよいのか全く分かりませんでした。とにかくお話を聞こうと一生懸命話を聞いていました。何人かの方とお話をし、その後、先輩僧侶の様子を見てみました。そうすると、先輩僧侶は被災された方と楽しく笑いながらお話をされておられました。その時私はなんでこんな悲しことがあったのに笑っていられるんだと不思議でなりませんでした。その活動が終わった後、先輩に話を聞くと、こういうことを言われました。
    「被災者の方は癒しを求められている。では逆になんで君は辛い人の前で辛い顔しかしないのか?」
    その時、私は相手のことを考えているようで考えていない自分に気が付かされました。確かに真剣にまじめに話を聞いてほしい人はいますが、それだけが全てではありませんでした。
    優しいまなざし、笑顔で接し、相手の不安な気持ちを取り除く努力をすることを私は怠っておりました。
    相手の喜びには一緒に笑い、相手の悲しみには共に励まし合うということが相手の気持ちに寄り添うことであり、「心施」なのだと気が付かされました。私はこの経験を通して、より相手の気持ちに寄り添う努力をしていこうと思いました。
    皆さんは普段からどれだけ相手の気持ちを考え、行動ができていますか?相手の気持ちに寄り添うということは、相手を幸せにする第一歩です。
    お彼岸を通して「心施」を学び実践し、相手の気持ちに寄り添うことのできる人になりましょう。合掌。

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