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裏をみせ表をみせて散るもみじ
2014年11月27日
11月の大阪は、雨も無く平年より温かい日が続きましたね。過ごしやすい日が多く、紅葉を見に行かれた方も多いのではないでしょうか?
妙見寺にあるモミジも、なんとか見頃を迎えました。京都・嵐山のようにとても色鮮やかとはいきませんが、きれいな赤色です。朝日に照らされ二上山をバックに見る紅葉はとても穏やかな気持ちになります。今回は少し長文になりますが、有名な詩のお話をさせていただきます。
裏をみせ表をみせて散るもみじ
これは曹洞宗の僧侶である良寛様が、谷木因(たに・ぼくいん)が詠んだ「裏ちりつ 表を散つ 紅葉なり」という詩を簡単に作りなおした詩です。
良寛様は亡くなる直前に弟子である貞心尼(ていしんに)に、この詩を詠んだといわれております。ひらひらと裏も表も見せて散っていく紅葉をご自身にたとえ、「私はあなたに人間としての表も裏も、すべてをさらけ出し、あなたを受け入れてきた。私も紅葉のように安心して仏様の浄土へ還っていくよ」とこの詩に表と裏とが出てきますが、人間の感情にも長所と短所があります。人は関わり合いの中で、その人の良い部分を見ている時には、あの人は素敵な人だから一緒にいたいなという感情になります。しかし時に悪い部分が見えた瞬間、この人と私は合わない、あまり関わらないようにしようという感情が生まれてしまいます。
人は自分に都合の良いものは受け入れ、悪いものは遠ざけようとするものです。生と死もそうです。生きることに執着をし、死を遠ざけて考えるのが私たち人間です。しかし諸行無常(変化しつづける世の中)ですから、必ず「生」には「死」があり、「自分」には「他人」があり、「楽」には「苦」があり、すべては相対的な関係があるわけです。
そのような世の中であるからこそ良寛様は、相手を受け入れ、自分の死をも受け入れることの大切さをこの詩に表されたと思います。
全てを受け入れて生きていくことは、自分の都合ばかりで生きていてはダメだということです。相手の気持ちに寄り添い相手の短所も受け入れ、許すということ。死が必ずあるということを受け入れるからこそ、一日一日を大切にし感謝をして生きるということ。
ひらひら落ちていく紅葉の葉に良寛様の想いを感じ、じっくりと人生を生きていきましょう。合掌。