妙見寺ブログ

  • チュンダ

    2022年02月01日

    2月になりました。皆様いかがお過ごしでしょうか。

    2022年も早いものであっという間に1カ月が経ってしまいました。今月の2月15日は我々仏教徒にとってとても大切なお釈迦様が入滅された涅槃会(ねはんえ)が開催されます。

    お釈迦様は29歳から6年間の修行を経て35歳でお悟りを開かれました。その後、45年間多くの人の悩みに向き合い、幸せに生きるための道を示されてきました。お釈迦様は80歳の2月15日に亡くなられた時、写真の絵(涅槃図ねはんず)の通り、沢山の弟子や動物が涙を流し、さらには草花さえもお釈迦様の死を悲しみました。それだけお釈迦様はその当時多くの生きとし生けるものに愛情を与え、心の拠り所として生きてこられたことがわかります。

    今回はこの絵の中の左側に映っている一人の男性についてお話をしたいと思います。

    この人は熱心なお釈迦様の信者であり鍛冶屋をしている「チュンダ」という男性です。チュンダが供養した時、きのこの入った食事でお釈迦様は食中毒を起こし、入滅されたと言われております。チュンダが供養した食事を食べて病気になられたお釈迦様は、チュンダが後悔の念で苦しんだり、他の弟子たちに厳しく責められるのではないかと心配されたそうです。そこでお釈迦様は弟子である阿難にこのような話をしたそうです。

    「私はこの世界に生を受けてから、二つの素晴らしい供養の食物をいただくことができた。一つ目は苦行をしたが何も得ることができず、苦行をやめた後、スジャータという村の娘にもらった乳粥。これで身体を癒し、悟ることができた。二つ目はチュンダが供養した食物で、煩悩の無い涅槃の境地に入ることができる。この二つの供養の食物は共にひとしい果報がある。チュンダは良き功徳を積んだのだ。そのことをチュンダに伝えてきなさい。」

    お釈迦様は亡くなる前にその言葉を残し、チュンダの心を慰められたそうです。

    私はこの話を聞いたときとても驚きました。お釈迦様はこのチュンダを恨むこともなく、なんの後悔の言葉も言うことなく亡くなられたのです。むしろチュンダへの慈悲の言葉を残して亡くなられました。

    もし皆さんが通りすがりの人からキノコをもらって食べてお腹をくだしたらどう思いますか?お腹を抱えて苦しみながら、あの人からキノコをもらうんじゃなかった。とか今度会ったら訴えてやるとか思うかもしれません。
    しかしお釈迦様はそのキノコで自分が死んでしまうとしても後悔はなかったのです。これはお釈迦様がいつ死んでも後悔のない人生を送ってこられたからではないでしょうか。皆さんはいつ死んでも後悔のない毎日を過ごせていますか?死というものは私たちにとってとてもネガティブな事かもしれませんが、私たちは死について考えることで、今の自分の人生には時間の限りがあることを意識します。それを意識することによって私たちは毎日生活を最大限に充実させようと思いますし、いつか言えなくなる前に大切な人に感謝の気持ちを普段から伝えようと考えるはずです。これは禅の教えにおいてとても重要な考え方です。

    私たちは過去へ時間を巻き戻すことはできません。私たちはお釈迦様のようにいつ死んでも後悔のないよう毎日を大切に生きるべきではないでしょうか。限られた命の時間を大切にし、豊かな人生を歩んでまいりましょう。合掌

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